医療情報技師能力検定試験受験記

昨日10月5日は医療情報技師の合格発表。

無事合格したので受験記を書き残しておこう。

 

この試験を受けようと思ったのは現在医療情報に関わる仕事をしているから。

それほど難関資格とも思わないし市場価値が上がるとも思わないがこの分野で会話するには最低限持っておこうねという程度のものだと思う。だからといって勉強せずに受かる試験ではない。

 

試験の申し込みをする前に他の方が書いたブログを読んだが、この試験の受験者の属性は概ね2つ。これは試験会場で周囲の受験者を見渡してもそんな感じだった。

 

属性1:医療機関の職員と思われる人たち。

属性2:医療機器メーカー、ITベンダーのヘルスケア部門の社員と思われる人たち。

 

この試験は3科目あって、全科目合格判定基準以上の点を取らないと合格しない。

科目1:情報処理技術(60分)全50問

科目2:医療情報システム(90分)全60問

科目3:医学・医療(60分)全50問

 

属性1の人たちは医学・医療を得意としていて、情報処理技術を苦手としている。

属性2の人たちは情報処理技術を得意としていて、医学・医療を苦手としている。

これはどちらも当たり前のことである。

医療機関で働いている人は医療系の教育機関を卒業して日々医療の仕事をしているので医学・医療の設問で問われる知識は基礎知識として持っていることが多い。

一方でITベンダーで働いている人は日常的に情報処理技術の知識は目にするし耳に入るし仕事で使うし若手のうちに基本情報や応用情報を取れと言われるし高度情報を持っている人もいるので、情報処理技術の設問で問われる知識は基礎知識として持っていることが多い。

 

ただし、属性1の人は医療情報室で働いている人もいれば、医事課や事務局と兼務している人、放射線技師の人、放射線技師出身の人、ITベンダーから転職してきた人もいるので全員が医学・医療を得意としているかというとそういうわけではない。医療機関というのは専門化が進んでいて自分の担当科以外のことは一般人と大して変わらない。どの属性の人もウイークポイントなのは看護、研究・統計だと思う。看護師でこの試験受けている人、資格持っている人を聞いたことがない。この試験には全く興味ない人たちだと思っている。

 

属性2の人も営業とかだと薄い知識しか無いので余裕ではないかもしれないが、SEと呼ばれる人であれば業務系の人でも基盤系の人でもネットワーク系の人でも余裕だと思う。特にネットワーク系の人が最強だと思う。

 

そして、この試験のメイン科目である医療情報システムは、属性1の人も属性2の人もかなり勉強しないと内容が多岐にわたるため日常業務で自然に全て網羅されることは無い。例えば属性1の人でも全ての診療科(産科や歯科や透析や臨床研究に至るまで)を経験している人はいないし、属性2の人でも自社の医療機器や情報システムが全ての診療科に関わることは無い。仮に電子カルテメーカーの社員であっても、縦割りなので全ての部門システムに精通している人などいない。

 

自分は属性2に近いのだが、どういう順序で勉強すべきか決めるために過去問や医療情報技師育成部会のHPに掲載されている過去の合格判定基準点を出来るだけ古い年から調べた。

2011年〜2022年までの11年間(2020年はコロナ禍で試験無し)では、

<合格判定基準点>

科目1:情報処理技術

最高64点 平均58点 最低52点 

科目2:医療情報システム

最高76点 平均72点 最低68点

科目3:医学・医療

最高60点 平均55点 最低48点

 

どれも6割が合格ラインで大差ないように見えるが、医療情報システムだけ120点満点なので比較し辛い。そこで合格判定基準点を得点率で表すと科目の違いが見えてくる。

<合格判定基準 得点率>

科目1:情報処理技術

最高64% 平均58% 最低52% 

科目2:医療情報システム

最高63% 平均60% 最低57%

科目3:医学・医療

最高60% 平均55% 最低48%

 

これを見ると、過去11年間の合格判定基準、つまりボーダーラインが最も高く設定されているのは医療情報システムであることが分かる。次いで、情報処理技術が高く、一番ボーダーラインが低く設定されているのは医学・医療となっている。

 

このデータに基づいて、医療情報システム→情報処理技術→医学・医療の順番で勉強したのだが、結果的にもこの順番で勉強したことは正解だった。過去問をパラパラ眺めるとすぐに気付くのだが、医療情報システムでは回答を「2つ」マークしなさいという設問が多い。

 

<今年(2023年)の問題で「2つ」マークしなさいという設問数>

医療情報システム:15問

情報処理技術:0問

医学・医療:13問

 

過去問を勉強する中で感覚的には医療情報システムのみが2つ選ばせる問題が結構出る印象だったが、今数えてみると医学・医療も同じくらい2つ選ばせる問題が出ている。今年の医学・医療の難易度が上がったのは過去問に無い設問が多く出たことに加えて、これも影響していると思う。

 

一般的に2つマークしなさいという設問は、1つだけマークする設問に比べて難易度が上がると思っている。理由は、1つは正解を見つけられるがもう1つを間違えるリスクがあるから。この場合に部分点があるとはHPからは読み取れず成績通知書が届かないと確認できないが、正解が1つの場合だと大抵の場合2択まで絞ることが出来て残りのどちらかが正解なのだが、正解が2つの場合は絞りきれない可能性が高くなると思っている。

 

で、要するに医療情報システムはボーダーラインが一番高く、2つ選ばせる問題が一番多く出るので、しっかり知識をつけておく必要があると考えて一番時間をかけた。情報処理技術は、応用情報とか高度情報とか持っていて過去問を一気にやれば短期間で大丈夫という見立て。そして最後に一番知識が無い分野である医学・医療を直前まで詰め込もうという戦略。

 

勉強に使用したのは過去問と篠原出版から出ているテキスト3冊だが、使ったのは殆ど過去問だけ。過去問を購入して最初にやるべきことは、本の裁断。過去問は設問と解説が分離しておらず、本のままだと勉強するのにとても非効率。自分は過去問を裁断して、科目ごと、年ごとにステープルして、更にPDFにして、モニターに問題と解説を表示して勉強した。

 

昨日解答がアップされたので自己採点してみると

科目1:情報処理技術 88点(44/50問)

66点以上が合格

→結果通知も88点

科目2:医療情報システム 72点(36/60問)

66点以上が合格

→結果通知は74点

科目3:医学・医療 66点(33/50問)

50点以上が合格

→結果通知も66点

 

何とか合格していた。

 

この結果から2つ選ぶ問題において部分点は無いということが分かる。

 

自分の手応えと違ってガッカリしたのが医療情報システム。7割は取れたと思っていたのでこんなに間違えているとは思っていなかった。6割しか取れていないので、もし、医療情報システムのボーダーラインが過去最高(63%以上)に設定されていたら落ちていた。一方で医学・医療は見たことが無い設問が多く、明らかに難易度が高かったと思っていて、落ちるのなら医学・医療がダメなんだろうと思っていたが、思っていたより取れていた。

 

こうなった理由は上記のとおり、勉強していった順番だろう。医療情報システムは試験の1月前には勉強を終えていて、医学・医療は直前の2週間くらいで詰め込んだのが点数に現れたなと感じている。医療情報システムについては、勉強を終えた後も他の科目の勉強の合間に間違えた問題と解説だけを纏めた資料を眺めたりしていたものの、所詮は詰め込んだ知識であり定着した知識ではないので、少し設問が変わったり紛らわしい選択肢があると間違えていた。まぁ社会人が仕事しながらの資格試験はこんなものだろう。

 

全ての科目が合格想定水準を60%とされている試験のようなので、問題が易しく平均点が上がれば、60%後半がボーダーラインになることもあれば、問題が難しく平均点が下がれば、50%がボーダーラインになることもある。つまり、ボーダーラインの幅は最大で17〜18%くらいあるということになる。結局、全科目7割以上確実に取れるよう過去問を繰り返し勉強して、当日のミスや問題の難化、平均点上昇などがあったとしてもボーダーラインを上回れるようにするというのがこの試験の勉強方法だと思う。

 

もちろん、科目合格を積み重ねて2年計画で合格を目指すという方法もあるだろうがオススメしない。何故ならこの試験は実施時期が悪いから。

 

この試験で自分が苦手としたのは、試験の時期である。詰め込みの勉強を行う7月8月は毎日のように最高気温35度を超える猛暑であり、試験日の8月20日はお盆明け。いつもはお盆に実家に帰省しているのだが、今年は帰省時期を試験後にズラした。実家なんて帰ったら絶対勉強しないし、家にいても勉強しないと思って、時間のある時は図書館で受験生に混ざって勉強していた。個人的には資格試験は11月あたりが一番良い。