「大学に行く意味ない」は本当か?

著名人が「大学に行く意味ない」と発言して少し炎上している。

暇なので自分なりにこの発言について考えをまとめてみたい。

 

動画も見たが「主語が無い発言なので」ありとあらゆる人に対して意味が無いと言っているように聞こえる。大学は当然行くものという風潮に一石を投じるための発言だとしても、これでは誤解が生じるだろう。

 

以下のような切り口で対象を絞って考えてみる。

1.インターネットが普及している時代なら全ての分野で大学が不要と言えるのか?

 大学レベルの知識はネットで学べて知的好奇心を満たせると主張。

 人的交流は同年代で未熟な人間とつるむより大人との方が成長できると主張。

【賛同出来る点】

⇒サークルやゼミ、研究室などの人的交流の意味・価値は極めて少ないと思う。日本の大学に多様性・国際性は殆どなく、早慶などの有名私学でも7割が首都圏出身者であり同じ高校出身者でつるんでいる人間が多数である。目的意識・向上心を持っている人間も少なく、刺激を受けることも少ない。課外活動にいたってはコロナ禍以前どころか20年ちかく前から減少しており授業だけ受けて家帰るというような学校(就職予備校)と化している人がとても多い。小遣い・生活費・学費を稼ぐためのバイトをするにも大人と交流があった方が、将来に繋がる経験や方法を教えてくれると思う。こういう話は個々に答えが異なるのでいくらSNSyoutubeを眺めていても得られない。

【賛同出来ない点】

⇒大学には学部ごとのカリキュラム(体系)があり、それを全て自分で行うことはよほどの自主性・積極的な知的好奇心が最初から無いと不可能。

 

2.最高学府に行く層からFラン大学に行く層まで全て行く意味ないのか?

 これがこの発言のキモと思われる。

 Fランで大学卒業資格得ても、費用対効果が無いと主張されている。

 ましてや奨学金(=借金)借りてしまうとペイするほどの収入を大半の人は得られないだろうと。

 また、大卒か否かで生涯賃金に差が出るという主張で揉めており今の時代企業も学歴だけでなく中身を見ていると主張されている。

【賛同出来る点】

 Fラン大学では、大企業への入社はほぼ無理なのでホワイトカラーとして高給を稼ぐことは出来ない。大学4年間の学費と生活費、人によってはその大半を奨学金という借金で賄うと社会人になった時点で数百万の借金を背負った状態でスタートしてしまう。しかも得られた知識も人的交流も学歴というブランド力も無価値。それであれば、早い段階で別の経験をした方が市場価値は高まるだろう。氏も言っているが若さというのはとても貴重で、体力も気力も好奇心も旺盛なので成長出来るポテンシャルがとても高い。それを周囲と合せて好きでもない勉強をダラダラやってモラトリアム期間を過ごすだけなら、社会経験を積むなり、好きな分野のスキルを磨くなりした方が成功する可能性が高い。ただし、行動力にすごく自信がある人に限る。

【賛同出来ない点】

 一定レベルの大学であれば、学ぶことはあるし、有名企業・大企業への就活切符(少なくとも学歴フィルターはクリアする)にはなるので大学卒業に価値はある。氏は起業家なので就職ということに価値を置いていないが、大企業でなくても多くの企業は採用要件を「4年生大学卒業」としており、高卒では採用試験すら受けることが出来ない。学歴を問わないという企業も中にはあるだろうが、ブラック企業の可能性がすごく高まるし、それを見抜く力は18歳や19歳には無い。もちろん若いのだから転職を繰り返せば良いのだが世の中そんなにうまくは行かない。疲弊して負のスパイラルにハマってニートになるのがオチだろう。インターネットがあればなどという理想論につられて自分の人生判断する人はいないだろうが、現実はこうなる未来が見える。

 

3.文系も理系も芸術系も音楽系も医学系も全て行く意味ないのか?

 さすがにそうとは言っていない。

 氏は主に文系を指していると思われる。理系も若干指しているが主張は弱い。

【賛同出来る点】

 文系、それも法学・経済学・経営学商学という実学系については、資格学校の方がコスパは良いだろう。ただ、これも上記のとおり、就活切符を得るためと割り切れば単位取るのは楽だし、最低限の労力で卒業資格は得ておくのが安全だろう。そもそも本気で経営や商売を学びたいと思うのなら大学の教室座ってるより、商いの現場に飛び込めよという話である。本気でそんなこと思っていない学生が大半なのがこの国の問題なのだが・・

 理系で唯一賛同できるのは、ITを学ぶ学生。日本の大学にはコンピュータサイエンスを体系的に教えられる学部は殆ど無い。次々に新しい技術・概念が生まれる分野なので大学で役に立たない遅れた知識を学ぶよりベンチャー企業にバイトで入って見よう見まねで経験積んだ方が圧倒的に成長出来る。ただ、ITについても罠があって、ネットがあれば場所は問わないと言っておきながら、企業は渋谷や六本木に集積している。勤務先が圧倒的に都心しか無いのもITの特徴。結局多くの人は群れていないと学べない・向上しないというのは真理だと思う。

【賛同出来ない点】

 理系についても若干指していたが、さすがに無理がある。実験施設くらい借りられるというようなことを言っていたが大学教育が無いと開発・研究・実験などの基礎知識・考え方のアプローチは学べない。当然就活切符も得られない。考えてみるとFラン大学には理系が無いことが多いので、理系はこの議論の対象外ではないか。理系で学問を学ぼうとすると研究設備が必要になる。大学に行かなければ志向する分野でそういうものに触れることすら出来ない。

 

4.大学院へ進学し研究者を目指す人も行く意味ないのか?

 そうは言っていない。アカデミックな世界で生きていくつもりの人は意味があると言っているのでこの議論の対象外。

 

結論としては、学力が下の3割くらいの人は、大学進学に拘らず好きな分野の専門学校などに行った方が先の人生考えても良いものになりますよということかと。

氏も人には向き不向きがあると言っている。勉強が苦手な人が無理に高等教育機関に進んでも勉強しないし分からないので覚えないし意味がない。大学に縛られる価値は年々下がってきていて、他の選択肢を選びやすくなっているのは確かだろう。